靴下がない

 


ない・・靴下がない。

 

 

僕は家族の衣類を洗濯機で洗濯をする。ドラム式の洗濯機の、そのクルクル回る様子を見るのが好きだから、僕は、洗濯を他人任せにはしない。スイッチを入れて、水が洗濯槽に溜め込まれて、そして洗剤と水が衣類に混ざりながら、衣類はクルクル回る。

 

衣類がクルクル回るのに合わせて、僕は顔をクルクル回す・・ただ何も考えずに、そうするひと時が、好きだ。

 

円運動フェチ、なのだろう。

 

・・・・・

 

ずっと歯の嚙み合わせが悪くて、特に左の上下の嚙み合わせが負担になっていて、顔の左だけ、ほうれい線が長く伸びている・・顔の左の筋肉が、コリコリに凝ってしまっているのだ・・

 

この嚙み合わせ、なんとかなんねえかな・・思っている・・いつも思っている・・いつも意識はそこに向かっているわけではないが、今、なにがしかについて考えていることと並行して、・・この噛み合わせ、なんとかなんねえか・・という、パラレル意識がいつもある。

 

思考として今、意識していることと、そしてそれに並存した意識は、常にある。その並存した意識は、一つではない。無数にある。

 

その並存された意識たちが、クルクル回る洗濯槽を見ている中で、その円運動の中心の一点に、入り込んでいく。

 

たとえば、瞑想において、眉間に意識を集中するなかで、並存する様々な意識が、眉間に現れる第三の目としての円の光・・その中にすべて吸い込まれ、そして浄化されるように・・だ。

 

瞑想において登場する眉間の光は、ただ「光」なわけではなく、円運動をしている・・そしてその光の円運動は、全てを吸い込む・・

 

僕は「円運動フェチ」であり、「円運動に吸い込まれフェチ」なのだ。

 

 

しばらく洗濯槽の円運動に吸い込まれる自分をそのままにして・・で、もういっか・・な感じで洗濯機を離れる・・

 

時間が経てば、洗濯機が「ピー、ピー」と、終わったよ、の合図の音を鳴らす。

 

洗いあがった洗濯物を、干す・・乾いたら、洗濯カゴに、衣類を入れて、で・・その、洗われ干され乾いた洗濯カゴのなかの衣類を、女房が、女房の都合のいい時に、畳む。家族それぞれの衣類を、女房が畳みながら分ける。

 

分けられた僕の衣類・・減る・・特に靴下が、減る。どんどん減る。

 

そしてとうとう、なくなる。

 

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