もう帰らない・・

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公衆のトイレの小便器から立ち上る、アンモニアの饐えた臭気が脳を突き刺す・・

 

突き刺されるのが好きだった。

 

だから子供の頃、学校のトイレに入るのも、駅とかのトイレに入るのも、ワクワクしていた。

 

学校のトイレの小便器には、丸くて黄色い芳香剤が排水口に置いてあったりして、その芳香剤から広がる匂いをかき分けるように、僕の嗅覚はアンモニアの匂いを探した・・そして、アンモニアの匂いだけを、脳に送り込んでいた。

 

今はトイレはどこもきれいで、JRのトイレも私鉄のトイレもコンビニのトイレも、きれいで・・住めるんじゃないか、っていうくらい、きれいで・・

 

・・トイレは変わった・・そして、僕も変わった・・

 

きれいであるがゆえに、量として減ってしまったあの臭気を、僕は吸い込むどころか、わずかでも吸い込まないように、息を抑えたりするようになった・・

 

思いっきり、あの臭気を脳に送り込んでいた自分は、もう帰らない・・

 

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