・・始まりは、ゼウスだった。
今、季節は春で・・この週末には桜も、例年よりも早く、関東とかでは開花するところもある、みたいなこと、テレビとかで聞いている。
・・あの時も、春だった、と思う。
今日は雨で、寒くて・・今、昼を過ぎた時刻、だけれど・・日付が今日に移った頃からの、夜中の時刻には、夜中の春風?みたいな感じで、外は風が結構、鳴っていた。ピューピュー、鳴っていた。
ちゃんと指で穴を塞いでないから、音がどことなくかすれている感じの、そんな感じの笛の音、みたいな風の音、だった。
・・春だったあの時は、風もなく、太陽も出てて、温かかった。なんの行事だったのか、その公園には人が集まっていて・・僕は今もその頃も、帽子を被るのが好きだから、そこでも帽子を被っていた。
今は色の濃い、黒の帽子を被ることが多いけれど・・その時は、ベージュな感じの帽子を被っていた。
その時の帽子は、今はないけれど、同じ形・・キャスケットの、黒の帽子は、今もよく被る。今年の1月の僕の誕生日に、長女が帽子をくれた。ベージュのイートン・キャップ・・可愛い帽子だけれど、あまり被ってないな・・被ると、小さくはない顔がさらに大きく見える感じで・・
今日は満月だけれど・・娘のくれた帽子を被ると、僕の顔は満月になる感じで・・
満月な僕の顔は、僕一人が自分の顔を鏡に映して、それを眺めるにはいいけれど・・なんか、その満月な顔を外に持ち出すのに、ちょっと抵抗感がある・・でも、たまに被って外に出る。
・・あの時の、その公園には鉄棒があって・・子供の遊具の、その一つとして備え付けられている・・そういう鉄棒で・・鉄棒のほかには、その公園には滑り台と砂場とブランコと雲梯と・・桜の木の大きなのがあって・・
その時、桜は満開だったと思います。
まだ、小学生になる前だった娘が、鉄棒のバーに、バランスとりながらお尻を載せていて・・僕はその娘の背後から、娘がバーからお尻を滑らせたりして、地面に落下したりしないように、見守っていたのだけれど・・
「あ」・・
娘の身体が前方に動いた・・危ない・・僕は咄嗟に両腕を伸ばして、娘の胴体を両掌で押さえ、指で娘の脇腹をホールドした・・その瞬間・・身体中に電気が走り、目の前が真っ暗になった・・
春のポカポカ陽気の、桜咲く公園の・・人が集うその中で・・僕だけが真っ暗になっていた。
ゆっくりと、僕の視界は色を取り戻して・・目の前の娘はバランスを回復させたのか、鉄棒のバーの上にお尻を載せたままで・・
今のはなんだったんだ・・雷?ゼウス?
そんなこと、思った。
干支、一周はしている、昔のこと、だけれど・・今と同じ季節の、干支一周以上前の、昔のこと、だけれど・・
ゼウスが落ちて・・僕は頸椎をやられて・・手指が痺れるようになった。
ゼウスめ。
・・それからずっと、痺れている。
⇩ 西川口の色