般若心経と私


世の中のハイテクな機器のことは、疎すぎるくらいに疎い僕で・・

 

「そんなあなたも大丈夫」のセリフに誘導されて、そのうちジャパネットタカタとかの餌食にされるんだろう・・

 

車に乗ればカーナビとスマホが勝手にブルトゥース接続されて、オーディオからスマホのミュージックアプリに入った曲が勝手に流れ出す・・

 

ハイテク機器をいじるのは面倒なので、勝手に流れる曲を、僕はそのまま聴く・・

 

その、流れ出す曲のなかに、いつミュージックアプリにダウンロードしたのかわからないのだけれど・・姫神のアルバム曲が入っていて・・

 

今日も、夕食のとんかつ弁当テイクアウトを買いに行ったとき、車に姫神が流れ出した。

 

勝手に流れる姫神に聴覚を支配されながら、昔のことを思い出していた。

 

地球の滅亡まであと何年かに差し迫った世紀末のころ、僕は日々の生活が切迫していて、昼の定職と夜のバイトを生きていた。

 

持ってるもの、金になるもの、とにかく何でも金にしよ・・そう思って、音楽CDを当時あった北浦和のディスクユニオンに持ち込んだりした。持ってるCDは100枚以上・・そのすべてを持ち込んだ。

 

驚いたことに、ほぼすべてを買い取ってもらえた。そして買取が叶わなかったのが、なぜか姫神のアルバムだった。一枚だけ手元に残った姫神だけとの生活が、それから始まった。

 

東北の寺でのライブ録音のアルバム。

 

その収録曲のなかに、僧侶たちの読誦する般若心経とシンセサイザーとのコラボの曲があって・・

 

午前0時を回ったころに、バイトから一人暮らしの部屋に帰り、冷蔵庫のリンゴを皿に載せ、果物ナイフで皮をむきながら、僕はその般若心経の曲を、一曲リピートで聞き続けた。

 

リンゴを食べ終わると、その曲を流したまま、ベッドに寝た。

 

無になれる、その頃の唯一の、救いの時間だった。

 

 

【聖地 三河島】三河島事故から60年の三河島駅界隈

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