「死」の不思議

家の床を小さな小さな、可愛い蟻が無数に、そこを遊び場みたいにしていて・・

 

虫・・一寸の虫に五分の魂・・じゃないけれど・・僕は殺すのは好きじゃない・・

 

でも、捕まえるには小さすぎて難儀するし、とにかくたくさん、ちょこまかしているから、僕は雑巾で蟻たちを拭い、あるいは、指で潰した。

 

たくさんの蟻の命が・・体の機能を奪われた蟻の魂たちが、きっと僕を恨んでいるだろう。一応、恨まれるのは嫌だから、自己保身的に(ごめんね)と、蟻への供養の言葉を心に呟くけれど・・

 

不思議で・・ずっと、不思議で・・

 

動かなくなった蟻・・動かなくなった人間・・どこに行ってしまったんだろう・・

 

スピリチュアルやエソテリックの本を読めば、死についてのその答えは、書いてある・・それはそれで、僕は納得するのだけれど・・並行して、納得できていない自分もいる。

 

スピやエソの、死に対しての理論はだいたいこんな感じだけれど・・人間を肉体・生命体・魂の3つに分けて、肉体から生命体と魂が分離する、それが「死」であって、その分離ののち、生命体と魂も分離する・・

 

まあ、そうなんだろうな、とは思う・・

 

でも、やっぱり、不思議なのだ・・いままで動いていたものが、動かなくなる、ということが・・

 

隣の布団で夜、寝ていた祖母が、朝、首を吊っているのが発見され、夜に寝ていたその布団に、運ばれて動かない姿で寝かされた・・動かない祖母を見て・・どこに行ってしまったんだろう・・小学生の時・・僕はとても不思議だった。

 

葬儀はその実家で営まれ、祭壇の前の棺のなかで、祖母の体は夏だったので、ドライアイスで冷やされていた。

 

その、祖母が眠り、祭壇がしつらえられた部屋の、隣の間続きの部屋で、僕は家族たちと布団を川の字にして、夜は眠った・・隣に眠っているのは母、のはずだが・・祖母だった。祖母が僕に背中を向けて、眠っていた。

 

その日だけでなく、しばらく、祖母は僕に姿を見せた。天井から僕を見下ろしていたり・・

 

死後の世界は遠くにあるんじゃなく、ここにある・・スピやエソの本を何冊が読めば、そんなことが頭では理解されてくるのは思うのだが、僕は実体験として、まあ、そうだな、と思う。

 

でもやはり‥不思議なのだ・・動いていたものが動かなくなってしまって・・一体どこに行ってしまったのか・・理論としても実体験としても、僕のなかでは辻褄が合うように理解されているはずなのに・・でも、「不思議」は僕から消えない。