鬱のスイッチ

昨夜、息子の、通学用のワイシャツを、ハンガーにかけた。洗濯したそのワイシャツを、乾かすために。僕の家にはベランダがない。だから、洗濯物は、いつも部屋干し。

 

プラスチックの黒いハンガー。その形状タイプは二種類あって、シャツの肩に沿うラインがアーチ型のものと、直線型のもの。

 

なんとなく、ワイシャツは、直線型のハンガーの方が、フィットするのかな、っていつも、干すときに、おもいつつ・・アーチ型のに掛けたりもするのだけれど・・

 

昨夜・・濡れたワイシャツを持って、アーチ型のハンガーを手にすると、来た。

 

あ、今、直線型でなく、このアーチ型のハンガーにこのワイシャツをかけたら・・間違いなく奴がやってくる・・という予感が来た。

 

奴・・鬱。

 

僕は、そういう時、鬱の一歩手前で、鬱になるべきかどうか、瞬時考える・・が、だいたい結論は決まっている。

 

鬱になる・・そう自分に判断する。

 

昨夜も、その、いつもの判断に従った。

 

洗濯物を干し終えて、すでに僕は鬱の状態に入り込んでいた。

 

鬱の感覚・・肉体と幽体は結合しているのに・・結合しながらも、分離している・・そういう感覚。

 

違う言い方で言えば・・肉体はある意味人間の感覚器官の集合体ともいえると思うが、その感覚器官の機能が、作動していない状態・・感じても、感じない・・

 

その状態は、気持ちのいい状態ではないのだが、僕はその状態が、自分にある二面性のうちの一つだと思うから、僕を通じて外に出してあげなきゃ・・そう思う。

 

気持ちのいい状態ではないけれど・・出してあげなきゃ・・

 

鬱には鬱のペースがある。鬱から抜け出ようと、焦ってしまってもいけない。

 

冷静に、鬱と対話を始めると、許したつもりでいて、許していなかった感情が自分のなかにあったことを、その感情に飲まれるなかで認識する。

 

ああ、この鬱は、この感情だったのか。

 

僕に知ってもらった僕のなかの、隠れていた感情が、怒涛に流れ出す。僕は、流れゆくその感情を、見つめている。

 

怒り、憎しみ・・封印して、仮面を作って・・

 

鬱が流れ切って、肉体感覚が回復して・・でまた・・仮面を生き始める。