生きているだけで

 

大宮で占いをしていた。

 

・・占いをしていた、っていうか、僕は有名占い師とかじゃないから、「待ってるお客さんが行列作る」とかは絶対になくて、「待ってる」っていう意味では、僕の方が、いつも「待ってる」

 

座って「待ってた」

 

 

おじさんがやってきた。知らないおじさんだ。

 

「占ってもらいたいんだけど、お金がないんだよ。帰る金もない」

 

・・・・「帰る金、僕に借りたいってことですか?」

 

「そう」

 

・・・・「いくらですか?」

 

「・・二千円」

 

・・・・「どこまで帰るんですか?」

 

「・・池袋」

 

・・・・「池袋、二千円かからないですよね」

 

僕は千円を渡した。

 

「26日にお金が入るんだ。26日、来るから。占ってもらってお金払って、借りたお金も返すから」

 

・・・・「貸した金は返ってこないと思ってるんで、返しにこなくていいです」

 

「必ず返しにくるから」

 

おじさんはそう言って、もう、駅に向かわなくては終電に乗れないその時刻、駅とは真逆に消えていった。

 

 

・・生きるとは・・大変なことだ。生きているだけで、人は立派だ。